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『大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は保存療法で治るのか?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は保存療法で治るのか?』について解説させていただきます。



大腿骨寛骨臼インピンジメントは(FAI:Femoro Acetabular Impingement)と称され『FAI』と医療業界では呼ばれます。

症状としては、股関節の引っかかり感や鼠径部や大腿外側の動作時痛などがあり、階段昇降や長時間の歩行での痛みが特徴とされています。

FAIは股関節の深屈曲や屈曲・内転・内旋動作で、骨盤と大腿骨が衝突して、関節唇や関節軟骨に損傷が生じる疾患とされています。

比較的、活動性が高いスポーツに携わる若年者に多い傾向にあります。

診断はレントゲン、CT、MRIなどの画像検査にて確認します。

治療としては、保存療法(薬物療法、運動療法)や手術療法(関節唇縫合、骨棘切除、THAなど)などがあります。



FAIの分類は大きく分けて3つ

1、CAM(キャム) タイプ

大腿骨の骨頭から頚部への移行部が骨性膨隆により、くびれがなくなる。

20~30代男性に多くみられる。

2、Pincer(ピンサー) タイプ

寛骨臼前外側に過度の骨性被覆が生じる。

30~40歳代の女性に多くみられる。

寛骨臼に骨棘や形態以上があると過剰に大腿骨頭を覆うためインピンジメントが生じる

3、Mixed タイプ

CAMタイプとPincerタイプの両方を併発

そんな中、2018年に、FAIが保存療法で治癒できているのかを検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところです。



◆論文紹介

Am J Sports Med (IF: 6.2; Q1)

. 2018 Dec;46(14):3415-3422.

 doi: 10.1177/0363546518804805. Epub 2018 Nov 6.

Nonoperative Management of Femoroacetabular Impingement: A Prospective Study

大腿骨寛骨臼インピンジメントの非手術的管理: プロスペクティブスタディ

Andrew T Pennock 1 2 3James D Bomar 1Kristina P Johnson 1 2Kelly Randich 1 2Vidyadhar V Upasani 1 3

Affiliations expand

Abstract

Background: The literature has given little attention to the nonoperative management of femoroacetabular impingement (FAI) syndrome despite a rapidly expanding body of research on the topic.

概要

背景 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)症候群に関する研究は急速に拡大しているが、文献上、非手術的な管理にはほとんど注意が払われていない。

Purpose: To perform a prospective study utilizing a nonoperative protocol on a consecutive series of patients presenting to our clinic with FAI syndrome.

目的:当院に来院したFAI症候群の患者を対象に、非手術的プロトコルを用いた前向き研究を行う。

Study design: Cohort study; Level of evidence, 2.

研究デザイン コホート研究;エビデンスレベル、2。

Methods: Between 2013 and 2016, patients meeting the following criteria were prospectively recruited in a nonoperative FAI study: no prior hip surgery, groin-based pain, a positive impingement test, and radiographic FAI syndrome. The protocol consisted of an initial trial of rest, physical therapy, and activity modification. Patients who remained symptomatic were then offered an image-guided intra-articular steroid injection. Patients with recurrent symptoms were then offered arthroscopic treatment. Outcome scores were collected at 12 and 24 months. Statistical analysis was performed to identify risk factors for the need for operative treatment and to determine patient outcomes based on FAI type and treatment. 方法 2013年から2016年にかけて、以下の基準を満たす患者を非手術的FAI研究に前向きに募集した:股関節手術の経験がない、鼠径部ベースの痛み、インピンジメントテスト陽性、X線写真上のFAI症候群。プロトコルは、安静、理学療法、活動性改善の初期試験で構成されていました。症状が残っている患者には、画像誘導による関節内ステロイド注射が行われた。症状が再発した患者には、その後、関節鏡視下手術が行われた。12ヵ月後と24ヵ月後にアウトカムスコアが収集された。手術治療の必要性の危険因子を特定し、FAIのタイプと治療法に基づいた患者の転帰を決定するために、統計分析が行われた。

Results: Ninety-three hips (n = 76 patients: mean age, 15.3 years; range, 10.4-21.4 years) were included in this study and followed for a mean ± SD 26.8 ± 8.3 months. Sixty-five hips (70%) were managed with physical therapy, rest, and activity modification alone. Eleven hips (12%) required a steroid injection but did not progress to surgery. Seventeen hips (18%) required arthroscopic management. All 3 groups saw similar improvements in modified Harris Hip Score ( P = .961) and nonarthritic hip score ( P = .975) with mean improvements of 20.3 ± 16.8 and 13.2 ± 15.5, respectively. Hips with cam impingement and combined cam-pincer impingement were 4.0 times more likely to meet the minimal clinically important difference in modified Harris Hip Score ( P = .004) and 4.4 times more likely to receive surgical intervention ( P = .05) than patients with pincer deformities alone. Participants in team sports were 3.0 times more likely than individual sport athletes to return to competitive activities ( P = .045).

結果 93関節(n=76人:平均年齢15.3歳、範囲10.4~21.4歳)がこの研究に含まれ、平均26.8±SD±8.3ヶ月間追跡調査された。65関節(70%)は、理学療法、安静、活動性の改善のみで管理された。11関節(12%)はステロイド注射を必要としたが、手術に移行することはなかった。17関節(18%)は関節鏡による治療を必要とした。3群ともmodified Harris Hip Score ( P = 0.961 ) とnonarthritic hip score ( P = 0.975 ) は同様に改善し、それぞれ平均20.3 ± 16.8 と 13.2 ± 15.5 の改善であった。カムインピンジメントとカムとピンサーインピンジメントを併せ持つ股関節は、ピンサー変形のみの患者に比べ、修正ハリス股関節スコアの臨床的に重要な最小差を満たす確率が4.0倍(P = .004)、外科的介入を受ける可能性が4.4倍(P = .05)であった。チームスポーツの参加者は、個人スポーツの参加者よりも競技活動に復帰する可能性が3.0倍高かった( P = 0.045)。



◆論文の結論

Conclusion: A majority (82%) of adolescent patients presenting with FAI syndrome can be managed nonoperatively, with significant improvements in outcome scores at a mean follow-up of 2 years.

結論 FAI症候群を呈した思春期の患者の大半(82%)は、非手術で管理することができ、平均2年のフォローアップでアウトカムスコアが有意に改善された。

Clinical relevance: A nonoperative approach should be the first-line treatment for young active patients with symptomatic FAI syndrome.

臨床的意義 症候性FAI症候群の若年活動性患者に対しては、非手術的アプローチが第一選択となるべきである。



◆まとめ

上記論文ではFAI患者76名93関節、平均年齢15.3歳(股関節手術の経験がない、鼠径部ベースの痛み、インピンジメントテスト陽性、X線写真上のFAI症候群)の治療による経過を観察しています。

治療計画は安静→理学療法→活動性改善の順に行われています。

症状が残っている患者には、関節内ステロイド注射が行われ、症状が再発した患者には、その後、関節鏡視下手術が行われています。

65関節(70%)は、理学療法、安静、活動性の改善のみで管理された。

11関節(12%)はステロイド注射を必要としたが、手術に移行することはなかった。

17関節(18%)は関節鏡手術によるを必要とした。

3群ともmodified Harris Hip Score とnonarthritic hip score は同様に改善した。

よって上記論文から、 FAI症候群を呈した思春期の患者の大半(82%)は、保存療法で管理することができ、平均2年のフォローアップでアウトカムスコアが有意に改善さることがわかりました。

今回は、『大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は保存療法で治るのか?』について解説させていただきました。