こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『変形性膝関節症(膝OA)に膝関節牽引は有効か?』について解説させていただきます。
変形性膝関節症(膝OA)の有病率については加齢とともに増加の一途をたどります。
膝OAは関節軟骨の変性や摩耗から始まり、進行していくと軟骨下骨の硬化や骨棘形成などの骨増殖性変化を生じて、関節の変形に至る疾患であるとされています(津村弘.2017)。
日本国内にはレントゲン学的な膝OAの患者は約2,590万人存在し、症状のある患者に限ってでも約800万人いると報告されております(Yoshimura N.2009)。
膝関節は膝蓋大腿関節、内側大腿脛骨関節、外側大腿脛骨関節の3つの関節で構成されています。
日本ではO脚変形が多いため、膝の内側にストレスがかかり、内側大腿脛骨関節の変形性膝関節症が大半を占めます。内側大腿脛骨関節の変形性膝関節症では立位や歩行時に膝の内側が痛いことが多く、膝蓋大腿関節の変形性膝関節症では立ち上がりや階段昇降などの膝の屈曲伸展時に膝蓋骨周囲が痛むことが多いです。
『変形性膝関節症(膝OA)に対するモビライゼーションの効果は?』
そんな中、2022年に変形性膝関節症に対して、膝関節牽引は有効かを検証している論文が海外で報告されています。
内容が気になるところです。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Clin Rehabil (IF: 3.48; Q1)
. 2022 Aug;36(8):1083-1096.
doi: 10.1177/02692155221091508. Epub 2022 Apr 4.
Mechanical traction from different knee joint angles in patients with knee osteoarthritis: A randomized controlled trial
変形性膝関節症患者における異なる膝関節角度からの機械的牽引。無作為化比較試験
Nabil Mahmoud Abdel-Aal 1, Amal Hussein Ibrahim 1, Mohamed Mostafa Kotb 2, Alaa Abdelraheem Hussein 3, Hisham Mohamed Hussein 1
Affiliations expand
- PMID: 35369762 DOI: 10.1177/02692155221091508
Abstract
Objective: To compare the effect of mechanical traction from different knee angles on pain, physical function, and range of motion in patients with knee osteoarthritis.
概要
目的 変形性膝関節症患者の疼痛、身体機能、可動域に対する異なる膝角度からの機械的牽引の効果を比較すること。
Design: A single-blinded, randomized controlled trial.
デザイン 単盲検無作為化比較試験。
Setting: Outpatient public and governmental Hospital clinics.
設定 公立・公立病院の外来診療所。
Participants: One hundred and twenty patients with knee osteoarthritis were randomly assigned into 4 equal groups with 30 patients in each group.
参加者 変形性膝関節症患者120名を無作為に4群に分け、各群30名ずつとした。
Interventions: Group (A) received conventional physiotherapy(CPT) treatment; group (B) received CPT with knee traction from full extension, group (C) received CPT with knee traction from 90° flexion, while group (D) received CPT with knee traction from 20° flexion. Interventions were applied 3 sessions a week for 4 weeks.
介入。グループ(A)は従来の理学療法(CPT)、グループ(B)は膝を完全に伸ばした状態から牽引するCPT、グループ(C)は膝を90°曲げた状態から牽引するCPT、グループ(D)は20°曲げた状態から牽引するCPTを施行した。介入は週3回、4週間行った。
Outcome measurements: Visual analog scale (VAS), knee passive range of motion and the Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC) were measured at baseline, immediately after 4 weeks of intervention, and after 4 weeks of no intervention as a follow-up.
アウトカム測定 Visual analog scale(VAS)、膝関節可動域、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)をベースライン時、介入4週間直後、フォローアップとして介入なし4週間後に測定した。
Results: After eight weeks, the mean (SD) for VAS scores were 30.97 ± 8.68, 24.0 ± 8.8, 15.43 ± 6.31, and 16.17 ± 6.11 mm; for total WOMAC scores were 26.77 ± 9.19, 20.3 ± 8.52, 13.27 ± 6.25, and 13.43 ± 7.14 for groups A, B, C and D, respectively. The three traction groups showed statistically significant changes in pain scores, physical function, and total WOMAC, but not for knee passive range of motion, in favor of traction groups C and D than the conventional group (P < 0.05).
結果 8週間後、VASスコアの平均(SD)は、A、B、C、D群でそれぞれ30.97 ± 8.68, 24.0 ± 8.8, 15.43 ± 6.31, 16.17 ± 6.11 mm、WOMAC総スコアは26.77 ± 9.19, 20.3 ± 8.52, 13.27 ± 6.25, 13.43± 7.14 であった。3つの牽引群では、疼痛スコア、身体機能、WOMAC総スコアにおいて統計的に有意な変化を示したが、膝の受動可動域については牽引群C、Dが従来群より有利だった(P < 0.05)。
◆論文の結論
Conclusions: Traction from 90°and 20° of knee flexion was found superior to full extension knee in improving pain and physical function, but not for knee passive range of motion, in patients with knee osteoarthritis.
結論 変形性膝関節症患者において,膝関節屈曲90°および20°からの牽引は,膝関節完全伸展よりも疼痛および身体機能の改善に優れていたが,膝関節可動域の改善には効果がなかった.
◆まとめ
上記の論文では、変形性膝関節症患者120名を従来のA群:理学療法群、B群:理学療法+膝伸展位牽引群、C群:理学療法+膝90°屈曲位牽引群、D群:理学療法+膝20°屈曲牽引群の各群30名ずつ、4群に振り分け、膝関節牽引の効果を検証しております。
評価項目は介入前、介入直後、介入4週後、その後に介入なし4週間後に痛みの項目としてVisual analog scale(VAS)、膝関節可動域、膝関節機能評価としてWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)を測定しております。
結果として、介入開始から8週間後の痛みのVASスコアおよび膝スコアのWOMACともに有意差はありませんがC群(90°牽引)→D群(20°牽引)→B群(0°牽引)→A群(理学療法)の順に成績が良く、C群とD群はほぼ同様の成績であったようです。
B群(0°牽引)、C群(90°牽引)、D群(20°牽引)の3つの牽引群は疼痛スコア、身体機能、WOMACが有意に成績が向上したようですが、関節可動域には有意な改善はなかったようです。
上記論文の結果を踏まえると、変形性膝関節症患者において,膝関節屈曲90°および20°の牽引は疼痛および身体機能の改善に効果があるようです。
実際の臨床においても、膝関節牽引は疼痛の改善に効果がある印象をうけます。
今回は、『変形性膝関節症(膝OA)に膝関節牽引は有効か?』について解説させていただきました。