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『変形性膝関節症(膝OA)に対するモビライゼーションの効果は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『変形性膝関節症(膝OA)に対するモビライゼーションの効果は?』について解説させていただきます。

 変形性膝関節症(膝OA)に有効なリハビリとは?

日本は超高齢社会に突入し、老化に伴う変性疾患の割合も増加してきております。

変形性関節症も今後、症例数が増えてくることが予測され、変形性膝関節症(膝OA)の有病率においても、加齢とともに増加の一途をたどると思われます。

膝OAは関節軟骨の変性や摩耗から始まり、進行すると軟骨下骨の硬化や骨棘形成などの骨増殖性変化を生じ、関節の変形に至る疾患であるとされています。(津村弘.2017)

国内にレントゲン学的な膝OAの患者は約2,590万人存在し、症状のある患者に限ってでも約800万人いると報告されています(Yoshimura N.2009)。

膝関節は内側大腿脛骨関節、外側大腿脛骨関節、膝蓋大腿関節の3つの関節で構成されています。

日本ではO脚変形が多いため、膝内側にストレスがかかり、内側大腿脛骨関節の変形性膝関節症がほとんどです。内側大腿脛骨関節の変形性膝関節症では立位や歩行時に膝の内側が痛いことが多く、膝蓋大腿関節の変形性膝関節症では、立ち上がりや階段昇降などの膝の屈曲伸展時に膝蓋骨周囲が痛むことが多いです。

徒手療法で有名なMulliganのConceptに他動的なモビライゼーションに患者自身の自動運動を組み合わせるmobilization with movement (MWM)という主義があります。

本記事では「自動運動を伴うモビライゼーション」と訳します。

関節周囲の筋群が繰り返し収縮させることで、関節運動の軌道が正常に戻り、神経筋協調性も改善すると推測されています。

そんな中、2019年に変形性膝関節症に対する自動運動を伴うモビライゼーションの効果を検証している論文が海外で報告されています。効果があるか、またどのような機能障害に効果があるか気になりるところです。

◆論文紹介

Clinical Trial

BMC Musculoskelet Disord (IF: 1.879; Q2)

. 2019 Oct 18;20(1):452.

 doi: 10.1186/s12891-019-2841-4.

The effect of mobilization with movement on pain and function in patients with knee osteoarthritis: a randomized double-blind controlled trial

変形性膝関節症患者の疼痛および機能に対する自動運動を伴うモビライゼーションの効果:無作為化二重盲検比較試験

Hani A Alkhawajah 1Ali M Alshami 2

Affiliations expand

Abstract

Background: Few studies have investigated the effects of mobilization with movement (MWM) in patients with knee osteoarthritis (OA) compared to other procedures. Sham procedures are generally more appropriate control than using no or usual treatments. Moreover, studies investigating the widespread hypoalgesic effects of MWM in patients with knee OA are lacking. The aim was to investigate the effect of MWM on function and pain in patients with knee OA compared to sham MWM.

背景 変形性膝関節症(OA)患者における自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)の効果を、他の手技と比較して検討した研究はほとんどない。一般的に偽の手順は、無処置や通常の処置を用いるよりも適切なコントロールとなる。さらに、膝関節症患者におけるMWMの広範な痛覚低下効果を調査する研究は不足しています。この目的は、膝OA患者の機能と痛みに対するMWMの効果を、偽のMWMと比較して調査することでした。

Methods: This is a randomized double-blind (patients and assessor) controlled trial. Forty adult patients with knee OA of grade II and above were recruited to receive either MWM treatment or sham MWM for the knee. The outcome measures included the following: a visual analogue scale (VAS) for pain, the pressure pain threshold (PPT) test, the Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis (WOMAC) Index, the timed up and go (TUG) test, knee strength and knee range of motion (ROM). The measurements were taken at baseline, immediately after intervention and 2 days later.

方法は以下の通りです。本試験は、無作為化二重盲検(患者と評価者)対照試験である。グレードII以上の膝OAの成人患者40名を募集し、膝に対するMWM治療または偽MWMのいずれかを受けてもらいました。評価項目は、痛みに対する視覚的アナログスケール(VAS)、圧痛閾値(PPT)テスト、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis(WOMAC)Index、timed up and go(TUG)テスト、膝の強さ、膝の可動域(ROM)などでした。測定は、ベースライン時、介入直後、2日後に行いました。

Results: Compared with sham MWM, MWM resulted in greater immediate improvement in pain [mean difference (95% CI): – 2.2 (- 2.8, – 1.6)], PPT at both the knee [176 (97, 254)] and shoulder [212 (136, 288)], TUG time [- 1.6 (- 2.1, – 1.1)], knee flexor strength [2.0 (1.3, 2.7)] and extensor strength [5.7 (4.1, 7.2)] and knee flexion ROM [12.8 (9.6, 15.9)] (all, p < 0.001) but not knee extension ROM [- 0.8 (- 1.6, 0.1)] (p = 0.067).

After 2 days of intervention, patients who received MWM also demonstrated a greater improvement in pain [- 1.0 (- 1.8, – 0.1)], PPT at the shoulder [107 (40, 175)], TUG time [- 0.9 (- 1.4, – 0.4)], knee flexor strength [0.9 (0.2, 1.7)] and extensor strength [2.9 (2.1, 3.9)] and knee flexion ROM [8.3 (4.7, 11.9)] (all, p ≤ 0.026). However, WOMAC scores and knee extension ROM showed no evidence of change at any stage after intervention (p ≥ 0.067).

結果 模擬MWMと比較して、MWMは疼痛[平均差(95%CI):-2.2(-2.8、-1.6)]、膝と肩のPPT[176(97、254)]と[212(136、288)]、TUG時間[-1.6(-2.1、-1.1)]、膝関節屈筋力 [2.0 (1.3, 2.7)] および伸筋力 [5.7 (4.1, 7.2)]、膝関節屈曲ROM [12.8 (9.6, 15.9)] (すべて、p < 0.001)の即時改善効果が大きかった。しかし、膝関節伸展ROM [- 0.8 (- 1.6, 0.1)] (p = 0.067)は改善がなかった。

介入2日後、MWMを受けた患者は、疼痛 [- 1.0 (- 1.8, – 0.1)]、肩部PPT [107 (40, 175)]、TUG時間 [- 0.9 (- 1.4, – 0.4)]、 膝関節屈筋力 [0.9 (0.2, 1.7)] および伸筋力 [2.9 (2.1, 3.9)]、膝関節屈曲ROM [8.3 (4.7, 11.9)] いずれも、p ≤ 0.026であり、大きな改善を示した。しかし、WOMACスコアと膝伸展ROMは、介入後のどの段階においても変化が認められなかった(p≧0.067)。

 



◆論文の結論

Conclusions: MWM provided superior benefits over sham MWM in terms of local and widespread pain, physical function (walking), knee flexion and extension muscle strength and knee flexion ROM for at least 2 days in patients with knee OA.

結論として MWMは、膝OA患者において、局所および広範囲の疼痛、身体機能(歩行)、膝屈曲・伸展筋力、膝屈曲ROMに関して、少なくとも2日間、偽MWMよりも優れた効果をもたらした。

 



 

◆まとめ

上記論文では、膝OA患者の機能と痛みに対する自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)の効果を、偽の自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)と比較して検証しています。膝OAの成人患者40名に対してMWMまたは偽MWMのいずれかを行い、介入前、介入直後、介入2日後に、疼痛(VAS)、圧痛閾値(PPT)テスト、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis(WOMAC)Index、timed up and go(TUG)テスト、膝筋力、膝可動域(ROM)を比較しています。

結果として、介入直後の即時効果があったのは、疼痛、膝と肩の圧痛閾値(PPT)、TUG時間、膝関節屈筋力および伸筋力、膝関節屈曲ROMであり、WOMACスコアと膝関節伸展ROMは改善がなかった。

介入2日後にも効果があったのは疼痛、肩の疼痛閾値PPT、TUG時間、 膝関節屈筋力および伸筋力、膝関節屈曲ROMであったが、と膝伸展ROMは変化が認められなかった。

よってMWMは、膝OA患者に対して、局所および広範囲の疼痛、身体機能(歩行)、膝屈曲・伸展筋力、膝屈曲ROMに関して、少なくとも2日間は優れた効果をもたらすということになります。

膝OA患者に対する自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)も治療アプローチの選択の一つとなりそうですね。

今回は、『変形性膝関節症(膝OA)に対するモビライゼーションの効果は?』について解説させていただきました。