こんにちは！
運動器専門のリハビリスタッフです！！
いつもお世話になります。
今回は、
『変形性膝関節症に対する装具療法は有用か？～変形性膝関節症診療ガイドライン2023～』
について解説させていただきます。
変形性膝関節症（膝OA）は、約800万人が疼痛を有しており、X線学的な関節症変化は約2,500万人に存在するといわれています。
2,500万人という数は日本人口の約1/5にあたります。
40歳以上の方に関しては有病率が約55％、有症状者（症状がある人）が1,800万人に達するといわれ、要介護への移行リスクが約6倍あるとのことです。
医療専門家が変形性膝関節症の診療を行うにあたり、最新のエビデンスに基づいた意思決定を行うために様々な文献、論文などの情報を採用します。
その中でも変形性膝関節症診療ガイドラインは重要視されています。
◆変形性膝関節症診療ガイドライン2023
変形性膝関節症診療ガイドラインは、変形性膝関節症（膝OA）の診断と治療に関する推奨事項を提供するために作成された文書です。このガイドラインは、日本整形外科学会によって作成され、疫学、病態、診断、生活指導、薬物療法、手術療法、リハビリテーションなど、変形性膝関節症の多様な治療法について詳細に分析し、推奨度を示しています。
【監修】日本整形外科学会
初版は2010年に変形性膝関節症診療ガイドラインが公開されました。その後、2015年に第2版の変形性膝関節症診療ガイドラインが公開されました。
そして2023年5月18日に『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』が出版されました。
このガイドラインでは変形性膝関節症に関する国内外の文献を渉猟し、ランダム化比較試験のような質の高い研究データを中心に分析されています。
2009から2019年の変形性膝関節症（膝ＯＡ）に関するCochrane 15,922論文、MEDLINE 27,314論文、医中誌27,314論文から、疫学、病態、診断、保存療法、手術療法におけるキーワードから選定し、555論文を抽出されています。その後にシステマティックレビューで新たに105論文を追加しているようです。
◆変形性膝関節症に対する装具療法（歩行補助具を含む）のエビデンス
このガイドラインの中から、
『変形性膝関節症に対する装具療法（歩行補助具を含む）は有用か』
という項目がありますので見てみたいと思います。
この項目では世界中の論文11編から再編されています。
推奨文と推奨グレードの基準に関しては以下の通りです。
【推奨文】
変形性膝関節症に対する膝装具、外側楔型足底版を用いた装具療法は鎮痛および機能改善に関して、その有用性は弱く推奨される。
・推奨度2：弱い（実施することを提案する）
・合意率82％
・エビデンスの強さC ：効果の推定値に対する確信は限定的である
変形性膝関節症に対する一本杖、靴、膝装具、外側楔状足底挿板の装具療法の有効性と安全性が検討されています。
◆疼痛に対して
VAS、WOMAC（pain）、KOOS（pain）による疼痛の評価では、装具療法は大きな除痛効果を有することが明らかになったようです。
内訳としては、膝装具と外側楔状足底挿板は大きな効果を認めましたが、靴と一本杖は有意の効果が認められなかったようです。
◆身体機能改善効果について
WOMAC（physical function）、KOOS（ADL function）、Lequesne score、Edinburgh Knee Functional Scaleによる機能の評価では装具療法は大きな機能改善効果が認められたようです。
内訳としては、膝装具と外側楔状足底挿板は大きな効果を認められ、ここでも靴と一本杖は有意の効果が認められなかったようです。
◆健康関連QOLについて
KOOS（QOL），Assessment of Quality of Life instrumentによるQOLの評価では中等度のQOL向上効果が認められたようです。
しかし、使用装具によるサブグループ解析では、個々の装具のQOLに対する有意な効果を認めなかったようです。
◆歩行能力について
外側楔状足底挿板と一本杖の効果を検討しRCTの2編があり、この2編のメタ解析では，客観的歩行能力の評価（6分間歩行テスト）では有意な改善効果は認められなかったようです。
◆装具療法のリスクについて
変形性膝関節症に対する装具療法の副作用に関して、膝装具群で10例に皮膚の刺激感や不快感などの合併症を認め、その副作用発生のリスク比は3.65とかなり高かったとされています。しかし、装具療法で副作用が発生した場合、装具を着脱することにより副作用が改善すると考えられるため、副作用は他の薬物療法，物理療法，手術療法に比し対処が容易であり、推奨度への影響は低いと考えられているようです。
◆まとめ
以上より変形性膝関節症（膝OA）に対する膝装具、外側楔状足底挿板を用いた装具療法は鎮痛および機能改善に関して大きな効果をもたらすようです。
しかし、使用する装具や膝OAの進行度によって効果にバラつきがある可能性が高いため、，膝装具、外側楔状足底挿板を用いた装具療法は治療法としては弱く推奨されています。
また、膝装具では皮膚トラブルに注意を払う必要があるとのことです。
一方、膝OAに対する一本杖、靴を用いた装具療法の有用性は不明とのことです。
今回は、
『変形性膝関節症に対する装具療法は有用か？～変形性膝関節症診療ガイドライン2023～』
について解説させていただきました。
『変形性膝関節症に対する物理療法は有用か？～変形性膝関節症診療ガイドライン2023～』
