こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『サルコペニアは大腿骨近位部骨折の危険因子?』について解説させていただきます。
近年、サルコペニアに関する話題が増加してきております。
サルコペニアとは筋肉量が減少することによる、筋力低下や、身体機能が低下した状態を表します。具体的な症状としては、歩行速度の低下、握力の低下などの症状が現れます。
サルコペニアは加齢が原因で生じる一次性サルコペニアと加齢以外の原因で生じる二次性サルコペニアに分類されます。
二次性サルコペニアでは病気や栄養不足から発症することがあります。
予防策としては栄養バランスの良い食事の摂取や運動を取り入れた生活をすることが重要となります。
そんな中、2013年に、大腿骨近位部骨折とサルコペニアの関連を検証した日本人による論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
◆論文紹介
Comparative Study
Geriatr Gerontol Int (IF: 2.73; Q3)
. 2013 Apr;13(2):413-20.
doi: 10.1111/j.1447-0594.2012.00918.x. Epub 2012 Jul 23.
High prevalence of sarcopenia and reduced leg muscle mass in Japanese patients immediately after a hip fracture
日本人大腿骨近位部骨折患者におけるサルコペニアおよび下肢筋量減少の高率推移
Tetsuro Hida 1, Naoki Ishiguro, Hiroshi Shimokata, Yoshihito Sakai, Yasumoto Matsui, Marie Takemura, Yasuto Terabe, Atsushi Harada
Affiliations expand
- PMID: 22816427 DOI: 10.1111/j.1447-0594.2012.00918.x
Abstract
Aim: Sarcopenia-related falls and fractures are becoming an emerging problem as a result of rapid aging worldwide. We aimed to investigate the prevalence of sarcopenia by estimating the muscle mass of the arms and legs of patients with and without hip fracture. 概要
目的:世界的な急速な高齢化に伴い、サルコペニアに関連した転倒・骨折が新たな問題となってきている。我々は、大腿骨近位部骨折の有無にかかわらず、腕と脚の筋肉量を推定することで、サルコペニアの有病率を調査することを目的とした。
Methods: This cross-sectional study examined 357 patients immediately after a hip fracture (the HF group) and in 2511 patients from an outpatient clinic who did not have a hip fracture (the NF group) at single institution in Japan. We carried out whole-body dual energy X-ray absorptiometry to analyze body composition with skeletal muscle mass index (SMI; lean mass/height(2)) and bone mineral density (BMD). We carried out stepwise logistic regression analysis to determine the factors associated with a hip fracture.
方法 大腿骨近位部骨折直後の患者357名(HF群)および大腿骨近位部骨折を伴わない外来患者2511名(NF群)を対象とした横断的研究である。骨格筋量指数(SMI:除脂肪体重/身長(2))と骨密度(BMD)を用いて身体組成を分析するために、全身二重エネルギーX線吸収測定を実施した。ステップワイズ・ロジスティック回帰分析を行い、大腿骨近位部骨折の関連因子を検討した。
Results: Lower appendicular SMI (P < 0.001), leg SMI (P < 0.001), and higher prevalence of sarcopenia (P < 0.001) were observed in the HF group after controlling for age and sex. The arm SMI was similar in both groups (P > 0.95). In multivariate analysis, the presence of sarcopenia, older age and lower BMD were associated with the occurrence of a hip fracture (OR 1.476, P = 0.002; OR 1.103, P < 0.001; OR 0.082, P < 0.001; respectively).
結果 年齢と性別をコントロールした後、HF群ではより低い四肢SMI(P < 0.001)、脚SMI(P < 0.001)、より高いサルコペニア有病率(P < 0.001)が観察された。腕のSMIは両群で同程度であった(P>0.95)。多変量解析では,サルコペニアの存在,高齢,BMDの低下は,大腿骨近位部骨折の発生と関連していた(OR 1.476, P = 0.002; OR 1.103, P < 0.001; OR 0.082, P < 0.001; それぞれ).
◆論文の結論
Conclusion: This study showed a higher prevalence of sarcopenia and more reduced leg muscle mass in patients after a hip fracture than in the outclinic patients who did not have hip fractures. The results imply sarcopenia can be a risk factor for a hip fracture.
結論 本研究では、大腿骨近位部骨折後の患者では、大腿骨近位部骨折のない外来患者よりもサルコペニアの有病率が高く、下肢筋量がより減少していることが示された。この結果は、サルコペニアが大腿骨近位部骨折の危険因子となり得ることを示唆している。
◆まとめ
上記論文では大腿骨近位部骨折直後の患者357名(HF群)および大腿骨近位部骨折を伴わない外来患者2511名(NF群)を対象に骨格筋量指数(SMI)と骨密度を用いて、大腿骨近位部骨折の関連因子を検討しております。
結果としては、HF群では脚SMIが有意に低く、高いサルコペニア有病率であったそうです。多変量解析では,サルコペニアの存在,高齢,骨密度の低下は,大腿骨近位部骨折の発生と関連していたとのことです。
この論文から、サルコペニアが大腿骨近位部骨折の危険因子となり得ることがわかりました。
また、この論文中では高齢者の大腿骨近位部骨折では、女性の44.7%および男性の81.1%にサルコペニアを認めるそうです。
サルコペニアに対して食事や運動により、治療的介入をしていく必要性がありそうです。
今回は、『サルコペニアは大腿骨近位部骨折の危険因子?』について解説させていただきました。